血管新生とその関連する疾患
血管新生とは?
血管新生は生理と病理的な特定の疾患にみられ、種々の分子や細胞の関与によって、新しい血管が形成される複雑な過程です。血管新生は、さまざまな病気で生じ、しかも、それぞれの病態の進展と密接に関連することが明らかとなってきました。血管新生が関わる疾患には、悪性腫瘍(ガン)とその転移、皮膚光老化、肥満(メタボリックシンドローム)、糖尿病性網膜症、リウマチ性関節炎などが知られています。
血管新生とがん及びがん移転
悪性腫瘍(ガン)は、血管新生により栄養や酸素をより効率良く取り込むことができるようになり、それと同時に老廃物を除去します。その結果、ガン細胞は成長し、場合によっては転移を引き起こします。従って、ガンにおける血管新生抑制の効果は、ガン細胞への血液を介した栄養や酸素の供給をブロックすることによって、ガン細胞を餓死させるという考えに基づいています。
血管新生と皮膚老化
皮膚の光老化とは紫外線によって、皮膚細胞が炎症を起こして、活性酸素などを産生し、細胞外基質(コラーゲンなど)を分解され、皮膚のシワ形成、黒色素の沈着などが発生します。その炎症と伴に、皮膚の血管も著しく変化し、紫外線の刺激により皮膚の血管新生の形成を引き起こします。
皮膚の光老化は皮膚の血管新生と深く関係があり、血管新生の抑制するによって、皮膚光老化を抑えることが期待できます。
血管新生と乾癬
乾癬は、血管新生を伴う炎症で皮膚や関節を侵す慢性再発性の疾患です。通常、鱗屑を伴う紅斑が皮膚に現れます。発疹の大きさや形は様々で、時には発疹が全身に及ぶこともあります。表皮角化細胞の過剰な増加、炎症細胞の蓄積、過剰な血管新生を特徴とします。また乾癬では、免疫媒介によるproangiogenic factors が産生されます。血管新生、表皮の細胞増殖、局所の慢性的な炎症の結果、発疹ができます。
血管新生とリウマチ関節炎
リウマチ関節炎(Rheumatoid Arthritis; RA)は、自己免疫が主に手足の関節を侵し、これにより関節痛、関節の変形が生じる炎症性自己免疫疾患です。リウマチ様関節炎は主に炎症性の症状で、炎症反応が関節液腔の関節腔を覆う微小血管から出るマクロファージや、Tリンパ球などの炎症細胞の血管外遊走により関節腔自身の内側に始じめ、これらの炎症細胞が関節腔への進入により炎症因子と血管新生促進因子を生産させ、炎症反応や統制のとれなくなった血管新生を促進します。
血管新生と肥満
肥満またメタボリックシンドローム(英 metabolic syndrome、代謝症候群、単にメタボとも)とは、内臓脂肪型肥満(内臓肥満・腹部肥満)に高血糖・高血圧・高脂血症のうち2つ以上を合併した状態をいいます。
1998年、アメリカ Yale 大学ではレプチン(Leptin、食物摂取量を規制するホルモン)は血管新生誘導因子であることを判明し、初めてScience誌で発表しました。肥満の形成は脂質生成(Adipogenesis)と血管新生(Angiogenesis)および細胞外マトリックス再建が必要となります。
近年、メタボリックシンドロームを治療及び予防のために、血管新生因子また代謝調節因子の血管新生制御作用が注目されています。脂肪組織内の血管新生の調節を介して脂肪組織の増殖・生存を制御することによる肥満治療の可能性も提唱されており、肥満病態における血管の役割を明らかにすることの重要性が示唆されています。
血管新生と糖尿病性網膜症
網膜には眼球に栄養や酸素を供給するための細い血管が張りめぐらされています。高血糖状態が長く続くと血管が詰まったり、切れたりする血管障害が生じます。この血管障害を補うため発達した血管新生は脆弱であり破れやすく、牽引性網膜剥離、硝子体出血などの原因となります。
生体防御の一部としての血管新生という現象により、逆に硝子体出血などのリスクが上昇し、それに伴い視力が低下し、失明に至る危険が生じます。糖尿病性網膜症では、新生血管の発生防止や消失を目的に、網膜にレーザー光線を照射する光凝固療法が行なわれており効果をあげています。つまり、血管新生を抑制することによって、病態の進行を防止し失明のリスクを低下させることが可能になります。
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